こんなん見たよ

〜 太陽を盗んだ男 【映画】 〜


監督  長谷川和彦
出演  沢田研二 菅原文太 池上季実子
制作  1979年


古麻呂歩

 こんな文章を書かせてもらっているくせに、 僕は「好きな映画は何ですか?」という質問に弱い。 趣味は映画鑑賞といえるほど、多くの作品を見ているわけではない。 それでもこうやって、他人様に紹介したいと思う作品に出会ったりする。 あれもこれも面白かったのだが、「MY BEST」となると……。

 この映画は、限りなく「MY BEST」に近い作品である。 ただ、悲しいかなタイトルを口にしてもわかってくれる人が少ない。 よって、この場を借りて宣伝してしまおうという寸法である。

 この映画のストーリーを簡単に言えば以下の通り。 冴えない理科教師(沢田研二)が自宅のアパートで原爆を作成し、 国を脅迫するというものだ。 本当に簡単に言えばこうなる。 そしてこれを元にジャンル分けをするなら、この作品は何になるだろうか?  アクションとかサスペンスとかいった感じかな。 いずれにせよ僕が好きなジャンルではない。

 僕にとってこの作品の魅力は、沢田研二演じる城戸誠に集約している。 彼は冴えない理科教師には違いない。 満員電車で押しつぶされながら登校し、遅刻。 その時に自分のことは棚に上げて生徒にお説教をする、という教師ではない。 生徒と一緒に校門指導員にクラスと 名前を告げるようなとぼけたヤツ。 生徒からはナメられているけれど、どこかで愛されている先生だ。

 理科の授業で原爆の作り方をまじめに講義したりする危ない彼は、 帰宅するともっと危険な男に変わる。 アパートに入ると、そこは実験室だ。 一人でちょこちょこと原爆を作る場所。 しかし、原爆を作りながらも楽しげにダンスをしていたりする。 なかなかかわいらしい。茶目っ気というのが彼の魅力である。

 そして可愛い我が子、原爆が出来上がる。 これを使って脅迫電話をかけるのだが、その要求がまた愉快。 まず、「野球を最後まで放送しろ」。 試合の結果が出る前に中断する野球中継が納得できず、最後まで放送しろというのだ。 くだらない。非常にくだらない。 これが僕は大いに気に入った。 別に野球は好きではない。 国家転覆すら狙える強大な力を持っている人間が、野球中継の延長を要求するのだ。 愉快、愉快。 また、この要求が考えた末に出たモノではないところも気に入った。 ひょんな思いつきなのだ。 つまり城戸先生は、原爆を作ること、それ自体が楽しかったのだろうと思う。 そして出来上がった可愛い我が子をお披露目しようとした。 でも、ただのお披露目は許されず、要求を考える羽目になってしまった……。 そんな気がする。

 その後の要求も、ラジオを聞いていて 「ローリングストーンズ日本公演」に決めてしまったり、やっと現金を要求したと思ったら、 渋谷の街にばら撒いたり。 手段、目的、結果というパーツがメチャメチャなのである。 これも僕の好み。手に汗握るのは嫌いではないが、それを要求されるのは疲れる。 力の抜け方が心地良かった。

 お話としては、かなり乱暴だったり、おおざっぱだったりするのだが、 日本映画らしからぬ作り(脚本家が外人らしい)と、沢田研二の魅力が満載の映画だ。 城戸先生の魅力は、沢田研二だからこその部分が大きい。 ラッシュでひしゃげた顔も、ダンスも、変装も、おかまキャラも、 沢田研二でなければ絵にならなかったと思う。 僕は沢田研二は大して好きではなかった。それは今の中年の彼を想定するからだ。 だが、この頃の彼はとても格好いい。まさにジュリーだ。 樹木希林でなくとも夢中になるだろうジュリー。 本当に時間というのは残酷だな、と思ったりもする。 もし「ジュリ〜」と叫びたいという人がいたら、是非「悪魔のようなあいつ」も見て欲しい。 城戸先生よりもキザなジュリーがそこにいる。

 原爆を作り、無茶苦茶な要求を出した城戸誠がどうなっていくのか。 ラストは「さもありなん」とも思えるし、「遊びの時間は終わらない」とニヤリともできる。 無理でもなく、脳天気でもない良い終わり方だと思った。

 僕が原爆を手にしたら……。理科は大の苦手だし、計算も嫌い。細かい手作業も出来ないから まずあり得ないのだが、もしそうなったらどうするか。 やっぱりどうやって使って良いかわからない。HPででも使い方を募集しようかな。 あなたなら、どうしますか?


目次へ戻る