こんなん見たよ〜 ジャズ大名 【映画】 〜
監督 岡本喜八 古麻呂歩この「ジャズ大名」というタイトルは、非常におかしみのあるものだ。 どちらかといえば、ふざけた類に属するだろう。 どんちゃん騒ぎだけで終わってしまう危険性が脳裏をかすめたのだが、 監督:岡本喜八、原作:筒井康隆、音楽:山下洋介……、このそうそうたる顔ぶれ。 さらにミッキー・カーチスやタモリも出ているという。 どうやら、ややこしいことを抜きに楽しめる作品のように思えた。 お話は、南北戦争終結後のアメリカから始まる。 有名な奴隷解放宣言というものによって自由の身となった黒人たちが、 故郷のアフリカに帰ろうと思い立つ。 そのための資金を稼ぐ必要が生じるのだが、彼らが生業に選んだのはジャズだった。 ジャズを演奏しながら港を目指し、やっとの思いで船に乗り込むのだった。 しかし、渡航のために頼った商人が実は悪いヤツだった。 彼らは香港に売り飛ばされる運命に。 船はアフリカへ向かわず、アジアの方向へ進むことになる。 その途中、ちょうど日本の近海で嵐に遭い、船は難破してしまう。 黒人達は日本へたどり着いた。 さて、当時の日本は鎖国の時代。 黒人たちが流れ着いた藩は大騒ぎになる。 彼らをどうしたものか思案した結果、幕府にお伺いを立ててみることになった。 思うに、この藩は現在の静岡県辺りだろう。 静岡といえば家康である。もうちょっと中央との結びつきがあっても良さそうなものだ。 幕府の回答は「君たちに任せる!」とのこと。 時節柄、明言できなかったのかもしれないが、最も困ったパターンである。 黒人たちを見れば、相手国の要人とは見えない。 抹殺して何も無かったことにすることもできたはずである。 だが、幕府に事の次第を知られてしまった。 その上、「任せる」という回答である。 「任せる」というのは「好きにして良い」という事だが、 「何かあっても幕府は責任取りません」という事にもなる。 もし万が一、アメリカから責められた場合には、「あの藩が勝手にやったことです。 幕府は知りません」と言われてしまう。アメリカ(もしくはアフリカ)に送り返すにも、 渡航費用は藩が持つ事になる。 国内に放てば、治安を乱したとして幕府に怒られることになるだろう。 いつの世も、役所の対応なんてこんなものだと思う。 さて、全てを一任された藩の主、古谷一行。 彼は、僕が考えるような厄介事になど目もくれず、ただただ異国からの客人に興味を持っている。 黒人たちは地下に幽閉されているのだが、見に行きたくて仕方がない。 しかし家臣に強く禁止されている。 日頃から藩政よりも音楽に興じている藩主は、黒人たちが持っていた洋楽器にも興味津々なのだ。 そんな中、この藩で不祥事が起こる。関係者の処分=切腹という運びが時代劇的なのだが、 この藩主はそんなことはどうでも良い、という人。 いかなるお沙汰もお受け致します、という覚悟の家臣に黒人との面会を要求する。 今まで藩主を制止していた家臣も、とうとう折れて、藩主は黒人と自由に会えるようになるのである。 そこからが、とことん馬鹿馬鹿しくて面白い。 ジャズセッションというのだろうか、みんなで音楽の演奏会が続くのである。 洋楽器を奏でる黒人に、和楽器を奏でる日本人。 また、楽器ではないものまでも音楽にしてしまい、城内は音が乱れ飛ぶ。 まさしく音楽。音を楽しむのだあった。 しかし時代は幕末。 薩摩だ長州だという面倒な人々が、この藩主の領内を行き交う。 そして戊辰戦争が始まると、官軍と賊軍が通り抜ける。 藩主はどちらの味方ということもなく、通過の許可をもらいに来る人には、 どんどん許可を出してしまうのである。 そして、城の中まで通行を許可。広い廊下を人々が通り抜けることになる。 いざ戦闘が始まれば、 兵隊が城の廊下を駆け抜ける。 矢が、鉄砲玉が、大砲が飛んでくる。 けれども藩主は一向にかまわない。 そんなことよりジャズなのだ。 大砲の発射音すら、太鼓の音と同じ。音楽に取り込んでしまうのだった。 やがて江戸幕府は倒れ、明治になって大正になって昭和になる。 みんなが行き来したお城の廊下は、東名高速道路になりました、チャンチャン。 なんと滅茶苦茶なストーリーなんだ! とお怒りになる方もいるかもしれない。 でも、僕はこれは娯楽作にほかならないと思っている。 メッセージを読みとれる場所が無いわけではないが、今回はそういった無粋な話はやめようと思う。 ただただ楽しい。難しいことなんか考えなくても良い。 頭や心が疲れたときに見ればいい作品だと思う。 |