こんなん見たよ

〜 Hard Luck Hero 【映画】 〜


監督  SABU
出演  V6、古田新太、塩見三省、寺島進
制作  2003年


古麻呂歩

 V6……坂本昌行、長野博、井ノ原快彦、森田剛、三宅健、岡田准一。 歌手としてはもちろん、バラエティー番組でもよく見かける彼らだが、 ドラマや舞台でも活躍している。 ジャニーズのタレントはいずれも同じだが、V6も例外ではないということだ。

 この作品は、歌手V6のプロモーションビデオ(PV)に使われたものだ。 とは言っても、ショートフィルムを作って、それを1曲に合わせて流した訳ではない。 「Darling」「強くなれ」「Hard Luck Hero」という3曲のPVの中で、この映画のシーンが細切れに登場するのである。 この作品を「桃太郎」とするならば、桃太郎が生まれてから鬼退治をするまでのシーンを織り込んで、 1曲分のPVを作るのはありがちなこと。 そうではなく、桃が流れるシーン、鬼退治のシーンを1曲に使い、鬼ヶ島から宝を持ち帰るシーン、 吉備団子を作るシーンを2曲目、鬼退治の大暴れシーン、桃が割れるシーン、犬猿雉とのシーンを3曲目に使う……といった感じだ。 つまりAの曲に映画の1、4、2というシーンを入れ、Bという曲に7、3、5というシーンを入れるといった風だ。……かえってわかりにくい説明になったかもしれない。わかってもらえれば幸いだが。

 この作品を、僕はビデオで見た。 劇場での公開は、その性質から考えてもなかったのではないかと思うが。 ビデオの最初に、その3曲のPVが収録されている。 それから、作品が始めるというわけだ。

 僕はSABU監督の作品は結構好きで、見たものも多い。 どれも、"駆け抜ける"といった感じの作品である(最新作は違うテイストらしいが、僕はまだ見ていない)。 この「Hard Luck Hero」も例外ではなく、追われるような作品、追い立てるような作品である。

 岡田(役名は全員にあるのだが、さして重要ではないので芸名を使う)は、中華料理店の厨房で働く青年。 井ノ原はその中華料理店のフロアで働いている。 休憩時間にたばこをふかす岡田の元に、井ノ原がやってきて声をかける。 中華料理店の裏家業……賭けキックボクシングのリングに上がってくれないか、と。

 外食産業のサラリーマン、坂本と長野。 彼らは外回りの途中で食事を取ることにする。 お店選びには自身があるという坂本のチョイスで入った所は、 昼間なのに薄暗く、青白いライティングが施されており、いかにも不健全な感じだ。 そこでメニューを見ていると、強面のお兄さん(寺島進)が「相席いいか」と現れる。 それに続いて「カシラ」と呼ばれる男(塩見三省)と、人相の良くないお連れさんがやってくる。 カシラは、この店のオーナーだと名乗る。 そして、これからこのお店で賭けキックボクシングが行われると言う。

 仲間……といっても、上下関係があるヤツの車に、傷を付けてしまった森田と三宅。 弁償するには500万だという。 ヨレた若者がおいそれと用意出来る額ではない。 途方に暮れる2人に、車の持ち主は「うちの親父の所で、賭けキックボクシングをやっている。 そこに集まる金を奪ってくれば許してやる」と言う。 もちろん、親父=ヤクザである。

 こうして、V6全員が賭場に集まることになる。 そこで事件が起こり、3組6人は走り出すことになる。 追いかけっこの始まりだ。

 3組は、ヤクザ、警察、時間に追われ、立ち止まることを許されずに走り続ける。 そのシーンはV6各人の魅力も十分に出ていたように思うし、SABUテイストも存分に味わえるように思った。 つまり、岡田のぶちキレ、井ノ原の小市民ぶり、坂本の日和見、長野の倒錯、森田の泣きべそ、三宅のはかなさ ……異論もあろうが、こんな顔を映し出す。かっこよかったり、情けなかったりという各人の顔が切り取られるわけだ。 これをテンポ良く、スリルとスピードの中で見せる。 悪くないと思う。

 そんな追いかけっこにもエンディングは待っている。 3組が再び同じ場所に集った瞬間、追いかけっこは終焉を迎え、 6人はその足を止めるのだ。 6つ並んだ病院のベッド、並んだ5人。そして1つの空きベッド。

 追いかけっこを終えた彼らは、それぞれに自分の道を歩き始める。 お咎めナシだったのだろうか、という疑問は残るが、 警官が簡単に発砲してしまう世界だったので、まあヨシとする。 ちなみに発砲警官(古田新太)の銃の腕は最悪だった。 お話の世界なのである。

不完全燃焼だった夢に再チャレンジする者、 今まで生きてきた世界で輝きを増す者、 新しい才能に目覚める者……。 こういう平和なオチを付けたのが、ややジャニーズ向けな気がした。 若者のアイドルなのだから、前向きな終わり方、といった印象である。 まあ、爽やかでよろしいのではなかろうか。

 この作品をちぎって、PVに散りばめる。 しかも3作品に亘って散らしていくというのは、試みとしては面白いと思う。 しかしPV3本だけを見た人にとってはどうだったのだろうか。 この「Hard Luck Hero」という本体がなかったら、なんのことやらわからなかっただろう。 PVに理屈など求めないという気もするが、キックボクサーに関しては説明があった方がよいと思う。 V6のPVを見たことがある人は、それらの大本を見る意味で、PVを見たことのない人は一つの作品として 楽しめるのではないかと思う。


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