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こんなん見たよ

〜 幕末太陽傳 【映画】 〜


監督  監督の名前
出演  フランキー堺、南田洋子、左幸子、岡田真澄、石原裕次郎
制作  1957年


古麻呂歩

 僕は落語の世界が好きだ。 ハチャメチャな設定や、人間の最も人間くさい部分が何気なく描かれているから。 かの立川談志師匠は「イリュージョン」とか「業」という言葉で説明している。 僕はそこまでカッチリと捉えているわけではないのだが、 「なるほど〜」と思うところも多く、無茶苦茶な展開でも難なく引き込まれるので心地よい。

 この作品は「居残り佐平次」という落語をモチーフにしている。 僕はこの「居残り佐平次」という落語が好きだった。 お金もないのに遊郭で豪遊した男が主人公、佐平次。 その彼が労働によって支払いをしようとするお話である。 現代で言うならば(いや、昭和のお話かな?)、たらふく食べた後に、金がないから皿を洗うといった感じ。 しかし、この佐平次さんがただ者ではなく、八面六臂の大活躍をする。 最初は厄介者だった佐平次だが、やがてはみんなにとってなくてはならない存在になるのだ。 いわばサクセスストーリーなのである。 自信はないけれど、植木等の無責任男にも通じるかもしれない。

 映画の佐平次さん(フランキー堺)は、肺病を病んでいた。 その療養の為に品川の遊郭へやってくる。 これは落語にはなかった設定だと思う。 僕が「居残り佐平次」を面白がっていたのは、もうだいぶ昔のことなのであまり自信はない。 けれど落語は痛快というか爽快というか、映画のような暗い部分はなかったように思うのである。 僕の好みとしては、佐平次に変な影を付けたりせず、ヒーローのように描いておいた方が良いと思った。

 仲間と豪遊した佐平次だったが、当然支払いのあてはない。 しばらくは「仲間が戻ってくるのを待っている」とかなんとか言っているが、 やがて化けの皮もはげてしまう。 そして遊郭で雑用をすることになる。

 佐平次は頭の回転が良く、とにかく口が達者。 この能力を活かし、遊女と客のトラブルを収めたりして、次第に重宝され始める。 店の者からも信頼されるまでになる。 この過程を楽しい。物語的な展開である。

 肺病の設定以外にも、落語と違うだろう部分がある。 それは高杉晋作(石原裕次郎)との絡みだ。 佐平次がいる遊郭に逗留しているのが高杉たちで、攘夷に燃える彼らのお話が少しずつ絡んでくるのである。 これは時代背景を印象づけるためなのか、高杉を石原裕次郎が演じることで大衆に媚びたのかは不明だ。 人を食ったような佐平次が、高杉と対峙するところや、高杉の懐中時計を介して表現される「友情」のようなものなど、 なかなか面白い要素ではあった。 でも、高杉晋作である必要があるのか……。 石原裕次郎である必要があるのか……。 これは疑問だ。 高杉の行く末を思うと、肺病と同じくマイナスの感情を持ってしまう。 スカッと楽しみたい僕にとっては、残念なところである。

 かなり古い映画で、もちろん白黒。 舞台も遊郭ということで髷モノである。 誰もが楽しめる、というタイプの映画ではないかもしれないが、 意味なく人が死んだり、CGで綺麗すぎる映像が出たりする昨今の映画に飽きた方にはこっそりと勧めてみたいと思う。


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